アイパオの話(その48)

考えてみれば誰にとっても人生は人との出会いが全てのようです。人生の幕引きが頭をよぎる年になりますと新たな出会いには少し憚られるところがありますが。

昨日14日対新型コロナウイルス非常事態宣言が一部地域を除いて解除されました。何より嬉しいニュースです。しかし4月7日に発令されて8日からジムも休館となり海外出張も1月9日大連行き以来4ヶ月も日本に居残って皆さんと同じく生活のパターンが一変しております。

お笑い演芸で唯一好きなのは志村けんさんの「馬鹿殿ご乱心」でした。その志村けんさんがが3月29日70歳でウイルスにやられて消えてしまわれました。人ごとと思えない死でありウイルスの怖さでした。それと4月16日には20年以上も一緒に仕事をしてきて技術問題なら何でも相談に乗ってくれていた野見山君が突然逝ってしまったのです。まだ56歳でした。否応ない訃報の一方で新たな出会いも生まれます。老婆(ラオポ)宣うところ年相応に身仕舞しとくべきです。かと言ってヤッパリ手放せない新たな出会いがあるのですね。今日はその出会いの話です。

今年の1月17日横浜で全日本釣フェスティバルが開催されルミカは不相応な広いブースに5棟ものアイパオを展開しました。そこに突然セネガルの青年が出現し翌月の大阪釣具ショーにもくっ付いて離れなかったことを報告しました。サッカーで鍛えたゴムまりのような筋肉、英語仏語スペイン語日本語それと母国セネガル語を流暢に操り何よりも人類生誕のアフリカでキラキラ輝く瞳を失わない男です。彼がアイパオに一目惚れしてアフリカで家と仕事がない人々に中洲と一緒に商売したいと言うのです。少女に散髪を教えて風が通る高原に小ちゃな理髪店を開業させたいとの中洲の絵空事を真に受けて中洲を促すのです。彼がその出会いに思えてなりません。

そのアフリカの暑く不潔な密集地で新型コロナウイルスが急拡散しているというニュースに誰もが心を痛めます。何とかしなきゃと。

今年の新入社員5名は揃って社会派でクラウドファンディングまで持ち出す学識者もいます。

社内の古参者相手に1月29日来たるパンデミックに抗うべく二酸化塩素香製品開発の進軍ラッパ吹き鳴らすも従者は疎ら。時間だけが無為に過ぎる悔しい4ヶ月でした。それでもヤマテやヒハラの努力で幾つかの新製品が生まれました。

その中のパワーミスト30&50を懐に名月を抱いてアフリカの野を駆け巡る夢が老体を突き動かします。この世に生を受けて一度はアフリカを肌で感じたい。セグチ女史と一緒にその仲間に加わるのはどなたでしょう?

セネガルの好青年

彼が惚れ込んだアイパオ

裸のウイルス(その10)

しっかり雨が上がった5日子供の日は由布農園で泊まりがけ作業です。今日は助っ人にオーノ君と彼の友人がやって来ました。お礼は農園から見える超酸性泉で有名な塚原温泉での入浴ということで。

由布岳の麓の荒地の開墾20年、時間に追われての農作業の後は温泉と酒です。強酸泉で身体が火照った後は小屋での酒盛り。冷たいビールとスコッチシングルモルツに浮かぶアイスボールを舐めての風薫るそれも春の朧月夜こそ人生の至福のひと時です。

ところがその酒宴がオーノの頼みで取り止めになりました。代わりにコロナウイルスの恐怖に晒される一夜が待ち受けたのです。

連れの友人に気兼ねしてかオーノの奴「中っさん、小屋には変な虫がゴソゴソ這い回るんで寝れん。今晩は旅館でないとイヤだ」「嘘ッ。巷のウイルスに比べりゃ小屋の虫っ子なんて可愛いもんよ」仕方なくダッチオーブンと炊き込みご飯の農園料理を酒抜きで馳走して街に下りることに。仕事の合間に「夢想園」他知ってる宿に電話してもこのコロナウイルス真っ盛りの中、何処も休館でした。結局探し当てていたのが素泊まり3100円のパブリックホテルです。

お客は勿論宿主の気配もない薄暗いカウンター。呼び鐘で奥から出現したマスク姿の亭主から洗い張りのシーツを手渡されます。

問題は枕と掛け布団でした。此奴こそウイルスを媒介する犯人です。例のプリンセス号だって乗客退室後の全客室を再検査したら大半のベッドにウイルス(死骸だと言ってるが)が残っていたとの発表がありました。そんな所に泊まれば即アウトですね。じゃあホテルも病院も老人ホームも一番怖いのはベッドというわけです。こんな時世に「不届きものが温泉に泊まって陽性に」なんて可愛そうなパチンコ屋さんと同じくテレビで叩かれるかも知れないのです。

ここは先ず例の新兵器でベッドにシューッとやらなきゃ・・・。それが温泉に泊まるなんて予想してなかったので開発館から持ち出していませんでした。仕方なく枕無し、掛け布団も足だけで眠れぬ夜を明かしたのです。

翌朝オーノを責めると「嘘ッ。11時に部屋に戻ったら中っさん大いびきだったじゃないか」「オーノ。風呂から上がって11時まで何しとったのだ?」「広島からバイクひとり旅の女性と別の30カ国これもバイク野郎と愉快な旅の話でね。そうそう。中洲の老婆(ラオポ)さんのお土産の特製モナカみんなで頂きました。お礼言っといて下さい」だって。やれやれでした。

しかし遂にコロナウイルスの痕跡を発見したようです。アフリカの子供達にも先ずは寝床の感染対策を急がせないといけません。

火口から噴煙が上がる塚原温泉