アイパオの話(その35)

読者の皆様には何時も下らない年寄りの繰り言にお付き合いいただき本当にありがとうございます。老婆(ラオポ)がうるさいので書くのを止そうと思うのですが毎日毎日面白い事が起こり作文が下手でも記録に残さなきゃと頑張っております。今日も是非最後までお付き合い下さい。

歳を取ると先が読めるのです。それも自分でもウットリするくらいにね。所がその先の先が読めずに例によって落とし穴に落ち込む話です。

もう5年も続く新製品開発の毎日も遂にゴール目前だと仲間たちにハッパをかけております。そのゴールのテープは6月26日から3日間北京国際防災展が開催される北京国際展示場のブースに掛かります。アイパオ、アイロッド、Bi見逃サーズ、サイリュームスプレーなど5年間の力作の出展です。老胡(ラオホ)はじめ大連ルミカの仲間たちは可哀想にトラックに資材を満載して14時間かけての北京入り、そして「未完成のアイパオ」の設置の2日間でした。中洲ときた日には21日の福岡大連の飛行機の予約が間違ったので搭乗出来ませんでした。それで24日急遽韓国に飛んで廃業した同業会社の社長と事業の引き受けの話し合いをして北京に入ったのが25日の夜。疲れ果てた仲間たちに謝るだけです。

こんなに綺麗なブースをこさえてくれました。アイロッド、アイパオ、防災グッズです。

さあ26日の朝です。会場でアイパオの勇姿を目の当たりにして檄を飛ばしました。そもそも防災防犯など事業としては一番難しい。そんな面白くもない展示会を覗く一般客なんかいやしない。その防災展に出展したのは100%中洲の選択ミスであります。だが明日を予想できないのが世の常。それで「何かが起こる。何かがアイパオに食らいつく。だから1件の大商談をまとめよう。隊長は慕(ムー)君。頑張ろう」で始まりました。

開場前に金魚総経理と展示場を見て回りますと獲物が続々います。中国VBにとって空中ドローンの次の狙い目は水中ドローン、しかし二匹目のドジョウが難しい。映像電波が通らない水中では発想変えなきゃいけないのに皆アタマが悪いようです。

救命用ラジコンボートを見つけました。以下のURLで映像をご覧ください。

このボートに我がBi見逃サーズ50mを取り付けてラジコンで「防水オズモポケット」を水中に上下させるのです。操作はネット経由で手元のスマホで行います。この会社に共同開発を持ちかけると勿論乗って来ました。救命用ボートだけなら売り上げは知れているからです。

どの会社も必死で新製品開発に取り組んでいます。水陸両用車もあってキャンパオと結べば面白い水上生活空間が出来そうです。

開演になり我がブースに戻りますが心配した通り客が少ない。金魚と相談。貴重な時間を無駄には出来ない。それで翌日の27日姫野さんと3人で連云港に飛んでルミカ東海の後始末に出かけることにしてホテルと飛行機を全て変更したのです。ところがブースに戻ると中国中央テレビの女性社員が待ち構えていました。「ルミカの社長がいるなら是非取材したい。それも明後日12時半に北京国際飯店のホールで」と。そこで金魚さんに「そういうことです。大物が掛かったのです。再度予定を変更しましょう」得意満面の中洲士郎、26日9時半からの防災展会場でのアイパオ取材を決定しました。そして再度変更した連云港からの北京着は26日午前2時、強行軍が待っておるのです。

26日朝、1時間の録画取りが終わりそれが中国全土に流されるとルミカのアイパオは世界の注目の的になるはずです。筈でした。

由布農園の昼下がり(その31)

最近はとみに高齢者の運転事故が問題ですね。ウッカリミスが殆どで中洲も毎日身に沁みております。昨日も大きな旅行カバン抱えての大連行きで・・・チェックインしようとしたら予約した搭乗日が間違ってて乗れませんでした。馬鹿さ加減にドッと疲れが出ます。

しかし「これ幸い」と大連でのアイパオ戦闘はオーノ、イワモト、ヒメノに託して今日は朝早く会社でサクラマス達の世話をして由布農園に駆けつけました。

ヤッパリ休日は農園に限ります。アスキーに起こされて淡竹(ハチク)の筍狩です。愛車アウトランダーの中で冷房かけてウトウトと幸せなお昼寝に浸り切っていたところでした。

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新澤さんがヒロコさんの為に里芋植えてます。

しつけの悪いアスキーの鶏たちが直ぐに畑の畝を壊します。可哀想なニイザワさん仕方なく網を張ってました。

それでアスキーがパンで彼らを呼び寄せて連れ帰りました。

田んぼではニイザワ小屋で育った合鴨の雛が今年も健気に水を掻いております。

新築中の中洲別荘。由布岳を背景に現れる勇姿と共に中洲のヘソクリはどんどん減ってしかも支配権は中洲の手から離れようとしているのです。

帰路、お魚用の200Lの水を揺らしながら大分道を走って夕飯に急ぎました。

チェリービールの話(その12)

市場調査のお話です。

長い大連出張からやっと日本に戻りました。会社というのは業績悪くて必死の時に気付かないのが「社内の厭世ムード」です。それが業績好調になると若い者は目的失調にでもなるのか鬱に囚われるようですね。

開発小屋でくつろぐ暇もなく管理本部長から「大変です!」と泣きつかれたのです。やれやれですね。しかし(これはいい口実になる)と思い直し「よ~しこんな時は飲みに行かなくっちゃ」とばかり問題のA君を連れて古賀からバスに乗って中洲に繰り出す事にしました。

中洲村も久しぶりです。バスを降りて日銀の裏手にある喫茶兼スタンドバーをふと思い出し、ちょっと顔を出す事に。そこのママは中洲若子の仲良しだったのでそのお礼で若子の死後時々飲みに行くようになりました。ほんの暫くのご無沙汰だと思っていました。今日の相棒のA君と静かに止まり木で冷えた生ビールで喉を潤して退散する心算が・・。「士郎さん、6年も来とらんよ。この子知らんやろう。もう5歳だ」ぽっちゃり丸顔のママが違う相手に本気で怒ってるようでした。抱いているのは可愛い娘でね。「あのう。僕の子じゃないよねえ」それで大爆笑。見知りの偉い先生(多分ママの追っかけ)も入ってきて店は大賑わいになりました。思えばズ~っと開発暮らしだったのです。

時間がないので傍の(管理部で頼りとする)A君を引っ張って隠れ居酒屋の「地球屋」と中洲村で一軒しか知らない「飲み屋N」を回って家にたどり着いたのは真夜中。長い出張でした。

翌朝「帰ってすぐに何処を飲み歩いとるんや」の老婆(ラオポ)に「開発や開発!」

実際綺麗な女性たちを前に中洲節で大騒ぎしてしまいました。年に一度も行かんのにそこも常連の振る舞いでねえ。(嫌ですねえ。静かに飲めばいいものを)しかし飲み屋で女性を喜ばせる極意はですねえ。大抵「実は今・・極秘のミッション中でね」と、懐から開発品を取り出して披露するのです。な~んだ思い出しました。いつも「ドラえもん」やってるわけです。

今回テーブルで披露するのは大連で誕生したばかりのルビー色に輝く「ルミコチェリーソース」(左手)とこれを使った極限のカクテル。この色をご覧あれ。「信じられない美味しさだわ!!」綺麗なホステスさんに気を良くしたが心配した通り帰りの勘定は高くてねえ。当分遊べません。

チェリービールの話(その11)

今日もセレンディピティ(予期せぬ幸運)です。

大連でのチェリーソースの開発も4日目で仲間たちに疲労感が出ております。その中で若いバンちゃんの甲斐甲斐しい動きは再放送中の「おしん」のようでした。

テーブルに並ぶサンプルの一つが中洲の目にとまりました。淡いピンクの液の表面が少し盛り上がっているのです。閃くものがあって少し傾けるとプリンとしております。ゲル化していたのです。

それは昨日張先生のチェリー農園で見つけた2本の名もないチェリーの搾汁でした。未だ脱水もしてないのにゲル化してます。金魚さんが「コラーゲンよ。日本女性の大好きな」って声を上げます。日本の消費者が愛でるコラーゲンは殆ど牛の骨から採った動物コラーゲンでしょう。これはもしかしたらチェリーから採った純粋の植物コラーゲン即ちチェリーセラミドかも知れません。実際バンちゃんと金魚さんの手の甲で薄っすらと光って皮膜をこさえています。

更にこのロータリーエバポレーターで2時間も脱水すれば天然のままで保存可能かも知れません。

「H子さんに捧ぐコラーゲンルミコ」なんて妄想を膨らませております。

1人の見目麗しい理系女が知り合いの会社に就職しました。研究職希望だったのに営業に廻され会社を辞めて大学の研究室に戻りました。そこで紹介された地元のVBを助けてリンゴ絞り滓からリンゴセラミド抽出の事業化に手を染めたのです。ベンチャー起業家の端くれ中洲はその事業に終始反対でした。物作りでは人と同じく原料の氏素性がしっかりしてないと大抵失敗するのです。ましてや絞り滓なんて養殖の餌に混ぜる位がオチです。結局3年間の艱難辛苦の挙句リンゴセラミドの事業化を諦め次に粉末冶金の研究室に入りました。その会社とは少しだけど縁があって(一応これが中洲の専攻でしたから)期待に違わず大きく輝いているのを知りました。惜しまれ泣かれて今春その下関の会社を寿退社したのです。だが果たせなかった夢、女性の肌を美しく輝かせるセラミド事業には依然思い入れが強いのです。

今回のチェリー化粧品開発は彼女に代わってのリベンジでもありました。動物には同じ品種ですら大きな個体差があるように植物でも品種によっては味と見かけが悪くても凄いパワーが秘められている。そんな事をワイン造りで耳にします。だったらチェリーで皆さんと一緒に隠れ品種を発掘してチェリーに新たな物語を仕込もうと言うわけです。

誰かさんの様な裏道交配と同じくチェリーにもハグレ交配での突然変異を期待するのです。大きくて美しく甘い新品種じゃなく農場主を裏切って見捨てられたチェリーです。それを偶々中洲チームが加工したら信じられない凄いパワーのコラーゲンルミコが生まれたという開発物語です。

化学物質ゼロだから皮膚に優しいのは間違いない。ウチの老婆(ラオポ)は化粧品アレルギーだから化粧代が掛かりません。このコラーゲンルミコは老婆(ラオポ)にうってつけかも知れんので帰国したら彼女にタダで実験を頼もうと思います。

チェリービールの話(その10)

チンユイ社長に頼んで大連ルミカにロータリーエバポレーターを設置して貰いました。これで思う存分実験ができます。空気漏れでヤマテ君は手直しで大変でしたが昨日から大活躍、何しろ安い、日本製の5分の一です。

昨日まででチェリーに残留農薬の心配はなくなりました。市場に出されるメジャーのチェリー・紅灯(ホントン)は色見でアウトです。だから自分たちでチェリーを探す他ありません。

それで今日は生い茂るチェリー農園に入って食べ歩きを楽しむ事にしたのです。この時期は大抵が紅灯(ホントン)という甘くて大きくて色見が濃いい市場で一番人気の品種です。加工するには色が濃いすぎるからアウトにしました。しかし70%くらいの成熟度なら一応テストする事にして仲間5人に収穫を頼み中洲一人園内をうろつく事にしたのです。

完熟前の紅灯。流石にチェリーの女王です。

しかしヤッパリあのチェリーが気になったのです。それは小粒で大層な鈴なりで赤見が強い厚い皮、しかも直ぐには外れないほどヘタが強いのです。要するに生命力がメチャ凄い品種、但し味は酸っぱいだけでした。見捨てられておりました。

日本の佐藤錦から何代も交配を重ねたのでしょう。小さくて食べる人などいやしない。見事な房なりだが朽ちるだけの定め。その内邪魔だと切り倒される運命です。張先生に名前を伺っても邪険に「知らん、名前などない」じゃあ皆んなで名前を付けることに。即衆議一決、品種名は「ルミコ」となりました。

中洲若子の話(余話その2)

ネットの検索エンジンってどんな仕組みなんでしょう。何でも調べ出せるが消されて行く情報も有るのですね。

母親の中洲若子の命の炎が細くなってしまってから彼女の奉公先が「いっぽうてい」であることを知りこれを手掛かりに中洲士郎のルーツ探しが始まりました。これを「中洲若子の話」として兎に角書き終えて中洲若子を弔ったのです。

最近は「一方亭」も検索にも掛からなくなってきました。一方亭のドラマが書に残らず歴史から消え去るのは寂しい限りです。

6月6日夜の事です。翌日からのチェリービールに添加するチェリーソース開発で大連にやって来たイケダ君と旅順の藍湾の賃貸マンションで飲んでおりました。夜も更けて取り留めない話がブログの「一方亭」に及んだのです。

8年前入社したばかりのフジイ君とイイダ君を連れて居酒屋「一方亭しょうき屋」の暖簾をくぐったのが探索の始まりでした。そのフジイ君が検索を続けたら遼東半島で日本建築の史跡を訪ね歩く粋人の写真ブログに「大連の一方亭」が収まっていたそうです。説明によると旅順の老虎灘の切り立った断崖の上に本家の一方亭を模して高級料亭が建てられたのは1932年、遼東半島が日本の租借時代だった頃です。本家の一方亭は戦後進駐軍に徴収された後焼失したのでその姿が僅かの写真に伝わるだけでした。なのにその雄姿が此処大連に残っているというのです。

イケダ君とバンちゃんが折角大連まで応援に来てくれたので張先生農園で仕事を終えて今日は2人に何かご馳走しなきゃと街に繰り出しました。最近大連空港前の通りにも万達集団が洒落たレストラン街を作りました。一画に大きな「龍虾館」が目に留まります。ロブスターを漢字表記したらそうなるのでしょうか。豪華な店内に客の姿は有りませんでした。メニューを開くとロブスター一皿270元(4000円)。まあいいかとオーダーしました。甘辛い味付けで傍の若いバンちゃん辛さに悲鳴あげながら元気にパクつきました。さてお勘定。なんと1050元(18000円)です。3斤半(サンチンバン)だと言ってます。そうかメニューの価格は1斤(500g)当たりだったのですね。金持ちに見えない客の懐を心配して、それで大きな生きエビをテーブルに見せに来たわけか。

中洲は気に掛けないフリをして銀レイカードで支払いましたがエラく高い食事、20年間の中国出張で一番高い食事に「ガクッ」です。

これが一皿15000円の料理です。

懐は厳しくなりましたが美味い食事にすこぶる気分良く、オリンピック広場のウオールマートで買い物を済ませて、ふと・・タクシーの運転手に老虎灘の一方亭跡に連れて行って貰う気になったのです。

80年以上の風雪に耐えた未だに勇壮な姿に当時の栄華が偲ばれます。一体日本の誰が此処に一方亭を建てたのでしょう。当時の一方亭の女将の高橋朝子はこの建築に関わったのでしょうか。もう少し一方亭探索は続くようです。

 

 

チェリービールの話(その9)

残留農薬バスターの登場です。

皆さま大連政府とチェリービール開発の約束を果たすために6月3日から大連に来ております。いよいよ今年も旅順半島はチェリーが朱色に染まりはじめ半島の北側道路ペイルー(北路)の道沿いはチェリー売店(売人)が軒を連ねてました。

実は6月26日から3日間北京で大規模な防災展が開催され今回初めて海外展示会でアイパオを出展するのです。その為に相棒のオーノやイワモトが準備で悲鳴を上げている最中でのチェリー騒動。大連工場は正に混沌の極みです。辻褄合わせで後から理由をこじつけるのは中洲の常套手段でしたが今回はちと苦しくて。それで開発の日取りを中国の3連休6月7日から9日に置いてなるべく社内の目に触れないようにしました。

ところが6月6日大阪からシャープなイケダとキュートなバンちゃんのチェリービール開発チームが中洲の応援にやって来るのでさあ大変。チェリーの先輩としてしっかり実験計画を組んで置かなくっちゃいけません。

そこでチェックポイント

★先ず安全なチェリーの確保。

★残留農薬のチェック

★加工向け最適品種の探索

★加工技術の確立

★レシピの決定

★日本に持ち帰ってビール製品化の研究

★大連政府との間で品評会の開催

素性の知れないチェリーを市場で買うのは心配だから哲人張先生のところの由緒正しいチェリーを使用することに決めておりました。一部の日本のブランド加工食品にならって使用した原料の生産者を明示するのです。

それで残留農薬の有無を調べます。方法はこんな仕組みです。化学発光が反応物質(CPPO)と酸化剤(H2O2)これに触媒が反応はを促進して化学発光を生じると前にも述べました。じゃあ触媒を入れずに更に反応を抑制する物質を入れておいて残留農薬や洗剤に吹き付けると化学発光を起こすのです。中洲がこれを残留洗剤チェッカーと称して売り出したけど今まで売上ゼロですね。判定が絶対信用できるかと問われれば「ノー」です。しかし自分で使う分は構わないでしょう。

中国のこの時期手土産と言えばみんな2kg箱入りのチェリーです。そして業者は色と甘味を激しく競っています。不用意な言動は物議をかもすので慎まなきゃいけませんが6月4日土産に貰ったチェリーで発光テストしたらヤッパリ光りました。食べる気がしなくなります。言っときますが日本の市場で求める果物も大抵光るのです。果物や野菜を洗わずに皮ごと食するのは控えられた方が安全です。

そこで張先生と社員を前に同じテストする事にしました。流石に先生はじめ皆さん不安気です。だが見事に発光しません(予想していた通りでしたが良かった!)ついでに張先生農園で収穫したばかりのイチゴをテストしたら発光してしまいました。

農薬は散布していないが甘味を増すために特別の有機肥料を使用しておりそれに問題があるのかもしれません。張先生も農薬バスター・世紀の大発明(?)にひどく感心していますが今回は使用するチェリーの安全性確認が目的です。だからこれ以上の探求は控える事にしました。

収穫された紅灯の熟成品を使って工場で所定のレシピでジャムにしました。色が濃すぎてアウトです。そこでチェリー最適品種探しに次の行動の照準を合わせました。