チェリービールの話(その11)

今日もセレンディピティ(予期せぬ幸運)です。

大連でのチェリーソースの開発も4日目で仲間たちに疲労感が出ております。その中で若いバンちゃんの甲斐甲斐しい動きは再放送中の「おしん」のようでした。

テーブルに並ぶサンプルの一つが中洲の目にとまりました。淡いピンクの液の表面が少し盛り上がっているのです。閃くものがあって少し傾けるとプリンとしております。ゲル化していたのです。

それは昨日張先生のチェリー農園で見つけた2本の名もないチェリーの搾汁でした。未だ脱水もしてないのにゲル化してます。金魚さんが「コラーゲンよ。日本女性の大好きな」って声を上げます。日本の消費者が愛でるコラーゲンは殆ど牛の骨から採った動物コラーゲンでしょう。これはもしかしたらチェリーから採った純粋の植物コラーゲン即ちチェリーセラミドかも知れません。実際バンちゃんと金魚さんの手の甲で薄っすらと光って皮膜をこさえています。

更にこのロータリーエバポレーターで2時間も脱水すれば天然のままで保存可能かも知れません。

「H子さんに捧ぐコラーゲンルミコ」なんて妄想を膨らませております。

1人の見目麗しい理系女が知り合いの会社に就職しました。研究職希望だったのに営業に廻され会社を辞めて大学の研究室に戻りました。そこで紹介された地元のVBを助けてリンゴ絞り滓からリンゴセラミド抽出の事業化に手を染めたのです。ベンチャー起業家の端くれ中洲はその事業に終始反対でした。物作りでは人と同じく原料の氏素性がしっかりしてないと大抵失敗するのです。ましてや絞り滓なんて養殖の餌に混ぜる位がオチです。結局3年間の艱難辛苦の挙句リンゴセラミドの事業化を諦め次に粉末冶金の研究室に入りました。その会社とは少しだけど縁があって(一応これが中洲の専攻でしたから)期待に違わず大きく輝いているのを知りました。惜しまれ泣かれて今春その下関の会社を寿退社したのです。だが果たせなかった夢、女性の肌を美しく輝かせるセラミド事業には依然思い入れが強いのです。

今回のチェリー化粧品開発は彼女に代わってのリベンジでもありました。動物には同じ品種ですら大きな個体差があるように植物でも品種によっては味と見かけが悪くても凄いパワーが秘められている。そんな事をワイン造りで耳にします。だったらチェリーで皆さんと一緒に隠れ品種を発掘してチェリーに新たな物語を仕込もうと言うわけです。

誰かさんの様な裏道交配と同じくチェリーにもハグレ交配での突然変異を期待するのです。大きくて美しく甘い新品種じゃなく農場主を裏切って見捨てられたチェリーです。それを偶々中洲チームが加工したら信じられない凄いパワーのコラーゲンルミコが生まれたという開発物語です。

化学物質ゼロだから皮膚に優しいのは間違いない。ウチの老婆(ラオポ)は化粧品アレルギーだから化粧代が掛かりません。このコラーゲンルミコは老婆(ラオポ)にうってつけかも知れんので帰国したら彼女にタダで実験を頼もうと思います。

チェリービールの話(その5)

調理器の事も書き残さなきゃあ。「鉄製はいかんよ。銅製が良いけど値が高いし熱の伝わりが早すぎるのでまあステンレスにしとけ。お玉杓子は木製がいいやろ」老婆(ラオポ)は威張っとります。しかしこの人の教えに従う他ない。

「それよりホーロー鍋ならどうだろう」中国の地方の市場には未だホーロー製品が安く出回っております。ホーロー製品の洗面器でしたら200円くらいで深鍋よりもずっと加熱撹拌が容易でした。サクランボを煮るのに洗面器使っているとは老婆(ラオポ)に話していません。

皆さま。どんな屁理屈つけたところでチェリージャムなんかをルミカと言う会社の事業に組み込むのはナンセンス。ところがこれが大連市から旅順特産品にしてくれとの要請。更に旅順名物チェリービールを誕生させるならそれは立派な社会貢献ですよね。隠れてゴソゴソやってたのが突然桧舞台に出ようとしてます。

仮にとんだ愚行だったとしてもこの作業から予期せぬ収穫、そうセレンディピティ(ついでのお駄賃)が出そうなのです。皆さま「嘘だろう!」って?まあ聞いてください。

[男の夢工場誕生]

さあ真空脱水装置エバポレーターを手に入れましたがこの装置の置き場と作業場所確保が大変でした。実験室の隅っこ、中洲若子が店を閉じた「赤ひょうたん」、島興こしとやらで取り組んだ「宗像大島」の施設をさまよい最後は本社駐車場にアイパオを建てて中洲ジャム工場を布告しました。

欧米の大抵の家庭では男の仕事場としてのガレージが有って工作機械も揃え男達は自分の威を保っています。しかし日本の男はと言えば狭い家に書斎も仕事場も無く無気力な邪魔者に身を堕落させているのです。中洲士郎もその一人でした。「妻子の為に男よ立ち上がれ!」そこに一攫千金を夢見る亭主の隠れ家「男の夢工場」アイパオが登場したのです。

初代アイパオはスチールチャンネルにビニールシート。

2代目はPVC異形パイプにPC(ポリカーボ]外装

[チェリーキャッチャーの発想]

果物の収穫はどれもこれも手作業と決まっています。枝の剪定も大変な作業です。旅順ではチェリー栽培で貧しい農民の多くが職に有り付きました。しかし4m以上の高い枝からの収穫は難儀で危険です。人手不足も加わり果樹の高所は未収穫チェリーだらけ。何かいい道具を開発しなきゃ。

5年ほど前青森のSさんの依頼で雪庇落としを開発しました。BiRod7500です。これを進化させたBiRodセットでは高所撮影や瓦礫の中、水中撮影もできるので人気商品に育ちました。次にBi見逃サーズとなるとこのBiRodの先にカメラと熊手と収納籠が付き手元のタブレットの映像を観ながらキャッチャーを操作してチェリーを収穫するものです。