裸のウイルス(その10)

しっかり雨が上がった5日子供の日は由布農園で泊まりがけ作業です。今日は助っ人にオーノ君と彼の友人がやって来ました。お礼は農園から見える超酸性泉で有名な塚原温泉での入浴ということで。

由布岳の麓の荒地の開墾20年、時間に追われての農作業の後は温泉と酒です。強酸泉で身体が火照った後は小屋での酒盛り。冷たいビールとスコッチシングルモルツに浮かぶアイスボールを舐めての風薫るそれも春の朧月夜こそ人生の至福のひと時です。

ところがその酒宴がオーノの頼みで取り止めになりました。代わりにコロナウイルスの恐怖に晒される一夜が待ち受けたのです。

連れの友人に気兼ねしてかオーノの奴「中っさん、小屋には変な虫がゴソゴソ這い回るんで寝れん。今晩は旅館でないとイヤだ」「嘘ッ。巷のウイルスに比べりゃ小屋の虫っ子なんて可愛いもんよ」仕方なくダッチオーブンと炊き込みご飯の農園料理を酒抜きで馳走して街に下りることに。仕事の合間に「夢想園」他知ってる宿に電話してもこのコロナウイルス真っ盛りの中、何処も休館でした。結局探し当てていたのが素泊まり3100円のパブリックホテルです。

お客は勿論宿主の気配もない薄暗いカウンター。呼び鐘で奥から出現したマスク姿の亭主から洗い張りのシーツを手渡されます。

問題は枕と掛け布団でした。此奴こそウイルスを媒介する犯人です。例のプリンセス号だって乗客退室後の全客室を再検査したら大半のベッドにウイルス(死骸だと言ってるが)が残っていたとの発表がありました。そんな所に泊まれば即アウトですね。じゃあホテルも病院も老人ホームも一番怖いのはベッドというわけです。こんな時世に「不届きものが温泉に泊まって陽性に」なんて可愛そうなパチンコ屋さんと同じくテレビで叩かれるかも知れないのです。

ここは先ず例の新兵器でベッドにシューッとやらなきゃ・・・。それが温泉に泊まるなんて予想してなかったので開発館から持ち出していませんでした。仕方なく枕無し、掛け布団も足だけで眠れぬ夜を明かしたのです。

翌朝オーノを責めると「嘘ッ。11時に部屋に戻ったら中っさん大いびきだったじゃないか」「オーノ。風呂から上がって11時まで何しとったのだ?」「広島からバイクひとり旅の女性と別の30カ国これもバイク野郎と愉快な旅の話でね。そうそう。中洲の老婆(ラオポ)さんのお土産の特製モナカみんなで頂きました。お礼言っといて下さい」だって。やれやれでした。

しかし遂にコロナウイルスの痕跡を発見したようです。アフリカの子供達にも先ずは寝床の感染対策を急がせないといけません。

火口から噴煙が上がる塚原温泉

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