アイパオの話(その7)

最近はウイスキーにはまっております。一年前知り合った「タリスカー」から今度は「オーヘントッシャン」です。いずれもスコッチのシングルモルトです。量が過ぎるとやっぱり朝お腹が重く感じます。

そういう時はいつかもお話ししましたが韓国家庭料理でスープに飯の入ったククパップが一番です。中でも棒鱈(たら)のブゴククが最高。スーパーで開いた鱈の塩漬け乾燥品を買って先ずオーブンでこんがり焼き塩抜きしてほぐしスープを作ります。これに大根の短冊、薄揚げとトーフを入れて煮込みます。焼きあごと同じく冷水に一晩浸けて味を出すのがいいのかもしれません。たぎったら少し硬めのご飯を入れて出来上がり。中洲の家族はみんな一様に不味いと不評だから由布農園で一人で作って食べます。

由布院農園には結構見知らぬ来客が多いのです。農園の前の農業水路の土手を歩きながら「何をなさってますか?」の声には大抵「遊んでます」と答えますと「へえ遊んでいるのですか?」と怪訝そうです。

10年ほど前の年の暮そうやって「お邪魔してもいいですか」に「はいどうぞ」と、この時は男女のふたり連れを招いたのです。6角形の小屋「SOHO1号」なんか覗いて「まあ。アートですね」なんてキザなこと言ってます。

お昼ですから例のスープ飯が余るので勧めると大層気持ちよく「美味い美味い」の連発。こちらも気分良くなりました。忙しいので早めにお引き取りいただきました。

翌年の正月会社に礼状が届きました。農園入り口のルミカの表札見てでしょう。内容は「ルミカ社長様。御社の由布院の農園に突然お邪魔しましたが大層親切な管理人さんに昼食をご馳走になりありがとうございました。どうぞあの管理人さんを大切にしてください」と。

「中洲はやっぱり見かけ悪いんだな・・・」

トンマな差し出し人は東京の木場フィットネス佐々山ミキとありました。木場なら東京支店からも近いし半年ほどして面白半分に訪問し東京出張時にはそのワンコインフィットネスに通うようになりました。

会社の常務もここに通ってミキさんのアドバイスをまじめに受けて物の見事に体質を改善したのです。

フィットネスコンビニ店経営のかたわら老人相手のソーシャルワークに精を出すそのミキさんですから東北震災救援にはじっとしておれません。

その彼女3月28日の夜青森の八戸に向かって借りたワンボックスを勇躍飛ばして行ったまま消息がありません。大丈夫だろうか。

4月1日ミキさんから次のメールが入りました。

連絡遅くなりました。

皆様からお預かりした物資を届けて、昨夜2時ころ無事石巻より戻りました。心配してくれるメールもたくさん頂いていたにも関わらず、連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。

肉体的・精神的な疲労もさることながら、私が現地で感じたこと・体験したことをまだうまく言葉にまとめられずいるうちにこんな時間になってしまいました。

まず何よりも先に、今回ご協力・ご支援頂いた皆様にお礼の言葉を述べさせて頂きたいと思います。本当にありがとうございました。私個人の力では決して成し得なかったことです。

それから、バタバタしていてせっかく頂いたメールにマメに返信できなくてすいませんでした。

今回私たちは29・30日と2日かけて石巻と女川、牡鹿半島の一部を回りました。

連日テレビやネットを通じて被災地の状況を目にしていましたが、実際にこの目で見た現地の状況は想像を遥かに上回るものでした。

この2日間で私はたくさんの人に出会い、たくさんの絶望と悲しみと、そのさらに奥にある人間の強さと優しさと生への欲望を目の当たりにしました。

その場に行かなければ、その人たちと触れ合わなければ知り得なかった事が本当にたくさんありました。肉体も精神もこんなに削った経験を生まれて初めてしました。

そして今回皆様の協力を得てそれらを知る機会を与えて頂いたこと、本当に感謝しています。

また今回ご協力頂いた皆様に私の経験したものをシェアするとともに、今回の活動のご報告を兼ねて、現地で私が得たことをまとめて近日中に公開したいと思っています。ちょっと時間がかかるかもしれませんがお待ちください。

街が、そこに暮らす人たちが元の日常を取り戻すには途方もない長い時間が必要になると思います。

これらを公開することが今後の息の長い支援に結びついてくれることを切に願っています。

2011年3月31日

本当にありがとうございました!

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